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人事責任者に聞く、売り手市場で採用した新人の育成手法

当社にて実施した人事ご担当者様向けセミナーのレポートです。
新卒採用市場は売り手市場となり、学生にとって有利な環境となりました。採用時には仕事の厳しさより福利厚生
の充実を伝えたくなるような状況の中で、企業人事はどのように学生や新人と接するべきなのでしょうか。
優秀な新卒学生の採用に成功し、HR業界内で注目されているパナソニック産機システムズ㈱で新卒採用・教育を
一貫して手掛けていらっしゃる、山村氏をお招きし、新人への教育施策やポリシーなどをお伺いしました。
どうぞ貴社新卒育成への参考材料としてお役立てください。

POINT
1.内定者・現場社員の双方に意識付けをすることでギャップを埋める
2.敢えて厳しいトーンの説明会等を実施するなど、採用活動と新人教育を一貫性を持って実施
3.優秀層・体育会系出身者の採用であっても早期段階からのマインドセットは重要



パナソニック産機システムズ株式会社



インタビュワー
簡単に社風を教えていただけますか。
山村氏
もともと大きなメーカーなので、おっとりしているというか、良い人ばかりです。基本はルート営業で飯を食べていける会社なんですね。今はお客様に恵まれ、お客様の要望にお応えしていることが多いですが、いつまでも続くわけではなく、次の戦略が求められています。それを考えていく中で、次世代を何とかして育てていこうと。10年後を目指して、いかにこの会社をリボーンさせるかというのが、自分の大きなミッションになっていると考えています。

インタビュワー
2015年から本格的に新卒採用を実施されて、直近の採用はどんな軸で実施されてきましたか?
山村氏
結局、ビジネスの根幹ってなんだって言うと、「人対人」だと思うんです。でも、高学歴の学生は学校のネームバリューで何とかなるよと感じている。彼らの根っこを理解して、どう変えるか。「そうじゃないんだよ、社会に出たら学校の名前なんて消えちゃうよ」ということに気づいてもらうことがとても大切なんじゃないかと思っています。
我々は、会社説明会で「働くとはどういうことか」を赤裸々に語っているんですよ。話の途中でも、学生には、しんどくなったり腹立ってきたら帰っていいよと、厳しいスタンスで語っています。そのような採用ステップを通過してくる学生は強く、優秀でかつ一癖ある学生なんです。自信がないと帰りますから。そのようなふるいを掛けることで、現場とのギャップをなくします。
厳しいメッセージを伝えていくと自信のある子だけが応募をしてきます。残るのは本当に個性的で強いものを持っている子たちです。ただ今時なので自分の出し方を知りません。だからそれを選考過程を通じて気づかせ、育成していっています。なので、うちで内定が出た後でバタバタっと他社の内定が出たりします。要は、気付かせてあげると彼らのアピールの仕方が変わってくるんですね。それでも、当社の第一印象が強烈なインパクトがあるもんですから、他社を蹴って帰ってきてくれる子がほとんどです。そんなユニークな採用をさせていただいています。

インタビュワー
強気な採用をされていると感じますが、そういう採用をされた方の新入研修をお教えいただけますか。
山村氏
そんなに変わったことはやっていないですよ。
例えばビジネスマナーとかにしても単なるお辞儀の角度が何度かとかは、マニュアルを読んでおいてねと。
研修では、ほとんど「なぜ?」ばかりを考えさせます。スキル系のこともやっていますけど、大切にしているのは「感受性」っていうキーワードで、1か月間の座学を通して考えさせる大切さを徹底して身につけさせていますね。
ただ、そういう研修を行っているのは理由があります。そのような研修が彼らに最も必要であると内定者時代に掴んだからです。内定者時代に半日ぐらいの研修を行いました。ワークをさせると卒なく回答してきました。時間内にきっちり終わらせて綺麗に回答するんですね。僕からすると「答えが欲しかったんじゃない、相互理解させたかったんだから、時間延長させてくださいっていう要望を出すぐらい深く話し合ってほしかったのに、なんできれいな回答を持ってきたの?」と。

当の本人達は「答え」を出すことが自分たちのゴールだと思ってしまって、どこかでブレーキをかけてしまっている。ブレーキを踏んで、そこそこで答えを出してしまう世代なんだっていうのを感じましたから、そこから入社までの間でどうしたらブレーキ踏まなくなるかなと。ブレーキを踏めば成長は起こりません。理屈を説明しても、それをまた卒なく受け止めて、卒なくやってくるだろうなと。それを何とかしなければと考えました。
地獄の特訓のような研修に送り込むことも感じましたが、そういう研修はただ負荷を掛けて思考停止させて従順にさせちゃう、イエスって言わせちゃうような研修がほとんどで、それは求めるものとは違う。10年後この子達が中核になる時に、ブレーキを踏んでいたらやっていけないよなと危機感を持ちました。思考を深めていって、しかもブレーキを踏まずに突き抜けていける人を育てるとなった時、エイムソウルと出会いました。
当社がお願いした研修は新入社員に強いプレッシャーをかけて自己内省させるというものです。自分の中にぐーっと入っていけるプログラムです。新入社員としての入り方が効いているんで、入社後の研修では何をやっても染み込んでいくんですね。厳しいインターンシップは採用のための情報提供だけじゃなくて、入社する前からの教育だと思っていますから。
新人研修の中で「なぜ」ということを考える習慣をとことんつけて欲しかったのですが、内定者時代での研修で、少しギャップがあったのでその間を埋めるものが欲しかったというのが正直なところですね。だから、それぞれのコンテンツを単発でやるのではなくて、採用の段階から新入社員研修まで全部がつながってきます。春先だけでなく、10月に行う振り返り研修も、マインドをもう一度思い出させる内容になっています。
当日は一貫してマインドを確認する振り返り研修を実施します。スキルは自然に身につくと思いますので、心が柔らかいうちに人事の方でマインドを定着させる流れを作っています。

インタビュワー
ありがとうございます。パナソニック産機システムズ様はマインドとスキルと両面で育成をされていらっしゃるとのことでした。今日ご参加の人事ご担当者様へお聞きします。皆さまの会社では、マインド面とスキル面はどのような比率で研修をしていらっしゃいますか?

参加者
当社はスキル面に力を入れていますが、どうしてもマインド面が置き去りになってしまっています。一方で、現場からはマインド面も早く現場で通用できるようにしてほしいとか、仕上げてほしいという声が多いですね。

インタビュワー
他の方はいかがですか?
参加者
当社もマインド面はさほど出来ていませんが、さきほど山村さんがおっしゃっていたように、先にマインド面を仕上げるとそのあとのスキル研修が入りやすいんだなと思いました。

インタビュワー
研修を行う際はマインド面とスキル面でバランスをとって行うことが大事だと思いますが、山村さんのお考えはいかがですか?
山村氏
私としては半々ぐらいがいいなかと。パナソニックグループなので立派な経営理念があります。考え方の根っこの部分を松下幸之助創業者がわかりやすく話しているんです。ただ表現が古いから誤解されてしまっています。
でも、若い人達がマインド研修で感じた「一生懸命取り組む」ことみたいなものが、幸之助創業者の言葉の中にいっぱい出てくるんですよね。共通点がいっぱいで、だからあの研修は意味があったんだよ、ストーリーがあったでしょと言うとみんな納得して、だからあの研修を受けなければいけなかったんですね、と。
単にマインドってポンって出すよりも、その前提に理念みたいなのがあってそれを実践しようとするとマインドが必要になる。その上でスキルがないと実現できないんだよね、っていう三層構造みたいなのが当社にはうまくはまりました。

インタビュワー
会社の文化や社風もありますので、そこのバランスがおっしゃる通り難しいんですね。マインドっていう一言でくくってしまうと危険なことかもしれないですね。では、最近の若者、新入社員はどう変化してきているとお考えでしょうか。
山村氏
私がベンチャーで人事をしていた時代から、たかだか10年ですが、明らかに変わっていますよね。
10年ぐらい前だと野心を持ってる子たちにベンチャーならではの語り口調で集めるというのはできたんですけど、安定志向の今の子たちはなかなかそういう言葉って響きません。
でも、当社では説明会の中でも、「勝つか負けるかしかないんだよ。現実は弱肉強食ですから、誰かが取ったら誰かが取れなくなるんだよ。勝ち残るしかないんだよ。」ということを前面に出してます。「誰かが勝たしてくれるじゃなくて、君達が戦わなくちゃいけないんだ。」ということを隠さずに語っています。
就活生の多くは内定を欲しくてそこがゴールというスタンスでやってきたかもしれないけど、「40年間先勝ち続けない限り飯食えないよ」という厳しい話をセミナーの段階からやってます。会うたびに言ってます。

インタビュワー
それはある意識づけというか啓蒙になるわけですよね。
山村氏
そうですね。一見、ツクシ世代の弱い学生に見えます。ただ「本当に競争したことないのか?」と言ったら「部活時代にレギュラー争いしました」とか、あるんです。受験もそうじゃないですか。何かしらで頑張ってきているんですから、実は勝負してきたんじゃないか、と。「挫折」を前面に出すとかそんなのはいらないと。勝った話をしてくれと言うと、それ言っていいんですか?と聞くわけですね。出し方を知らなかったり、世の中ではそれを出すのがかっこ悪いという空気感があるので、見せられないだけなのでしょう。そこを見せてもいいよと言えば出せる子は実は少なくはない。

インタビュワー
入社前、入社後にいくら研修をしても研修と現場との温度差を合わせるというのは難しい、と人事ご担当者様からよくご相談頂くのですが、パナソニック産機システムズ様は、何か工夫されていらっしゃいますか。
山村氏
ウチの場合は、まずは内定者を導入研修で徹底的にギアチェンジさせています。その上で、内定者が非常に意識高くなっているので、今度は現場の意識も同じように上げなければならないという点が課題でした。そこで、まず、内定式で仕掛けをしました。入ってくる子たちを見せた瞬間に経営陣の意識が変わってくれた。
それから4月1日の入社式の後の経営方針発表会で、ギアチェンジ研修のドキュメントビデオを全社に見せたんですよ。研修中に一生懸命やっているところを見せました。1/3くらい泣いている人たちがいました。揺り動かされるんですね。「あなたは一生懸命やっていますか?」「会社を変えていきたいんですけど」って全社員に新入社員の取り組み方を通じて、既存社員にもマインドチェンジの必要性を突きつけました。
そこからは、新入社員が行けば「あ、映っていた子ね」ってなるわけですよね。彼らもそういう目で見られるので手を抜けないんですね。周りもそういう子たちを受け入れなければいけないって空気ができちゃったんですよ、4月2日の時点で。会社の空気が変わりました。
会社が変わり始め、来年また新入社員が入ってきたらどうなるのか、5年後はどうなのか、10年後はこの会社はどうなっていくのかという手ごたえは感じています。ギアチェンジ研修を受け、キラキラと目を輝かせて入ってきた新入社員を目の前にして、先輩達も変わらざるを得ない雰囲気になりました。

インタビュワー
それではご参加頂いた人事ご担当者の皆さまから、山村さんへ自由にご質問頂ければと思います。

参加者
採用活動において、学生評価をする際にはどんなところに苦労されていらっしゃいますか。
山村氏
手間ひまはかかっていますね。会社説明会も最低3時間はかけます。インターンシップ中の1日で、採用の裏側も話してます。働くということの覚悟ということを分からせようとすると時間はかかりますね。さらに後日、当社に興味のある人だけは質問を受けるからと、3時間ぐらい質問に答える座談会も用意しています。そこで本当にウチがいかにしんどいかって話をすることで、さらにギャップをなくすと同時にスクリーニングしています。

参加者
結構はっきりお話しされるんですね。そこまでやっている会社さんって少ないじゃないですか。話を聞いてこの会社は自分に合っていないという人はお引取りいただくということですよね。
山村氏
失敗したことがあるんです。夢ばかり語っていて、結局来たら何もないじゃんって半分ぐらい辞めちゃったんですよね。だから、きれいなことばかり言ってもしょうがないな、全部見せてやろうって。それでもやりたい奴は来てくれって話をしたら、意外と戻ってきてくれたんですね。そして定着してくれた。

やってみたら意外と食いついてきて、「そういうの待っていたんですよ!」という学生も多かったです。逆に本当にそれを聞いて顔色変えて帰っちゃう人もいるんですよね。でも残っている子たちは分かったうえで入ってきているので泣き言を言っても、こちらは「採用するときに厳しいよって言ったよね?」としか言わないですからね。
実際にハードワークをしている会社ですが、新卒採用で離職者が未だに出てきません。3世代ぐらい揃ったら会社の中で一定のパワーを持てるのかなと。もちろん厳しいだけじゃしんどいので、10年後どういうステージが待っているんだと。約束はしないけれど、それも考えさせて、それが手に入るのかは君たち次第だよと。
大切なのは忍耐力じゃない。その状況を楽しむってこと。「耐えられます!体育会系です」ってアピールされるんですけど、うちはそんな会社じゃないよ、と。人はしんどいというかもしれないけど、楽しいと思って働いてるから。耐えるのではなく、楽しめばいいんだ、と。そこまで理解させるには1時間のセミナーでは到底伝わらないので、3時間とか1日かけてメッセージを伝え、さらに質問に洗いざらい答えておいて、考え方は一貫してるでしょっていうのを腹に落とすと彼らも納得してくれます。
入ってきたらそういう研修も待ってますから、一貫性、ストーリーを持った採用と教育を大事にしています。学歴とかではなくマインドっていうか、魂がなければこの会社をリボーンさせられないと思うので。そこにこだわっていますね。

参加者
採用から育成まですべて計画をするというのは経営を握るというか、そこを乗り越えるのが一番大きな課題ですね。スキル研修ばかりやっても定着しなかったら意味ないですしね。
山村氏
以前、「マインド系の研修をやったとしても形に残らないから、もったいない」とある社員に言われましたね。でも、スキルをつけても人自体が動かなければ何も活用できないじゃないですか。根っこにエンジンを持たなかったら意味がないんだよって。理解してもらうまでには苦労しましたけどね。

インタビュワー
研修を行う際は、何のためにこの研修をやるのか、どういうゴールにしたいのかを経営側と握っていくことが大事ですね。また、研修と現場とのギャップをいかに埋めるかも大事です。研修で伝えることと現場で言われることが違っていると主役である新入社員が一番混乱しますから。そこが研修の難しいところなんですね。

参加者
マインド研修で一番伝えたいことは何ですか。
山村氏
自分に限界がないということですね。怖がっているんですよね、限界が来ちゃうとか、折れちゃうとか。そんなの関係ないし、「どこまでも行けるよ」ってことを感じさせたいですよね。

参加者
コンサル時代にマインド系の研修をやりましょうっていう時も、限界まで知らせるっていうことをやってらっしゃったのでしょうか。それとも、その会社に合せてやっていたのでしょうか。
山村氏
その時は、お客様のオーダーに合わせてやらざるを得ないですよね。やはりスキル系の研修が多かったと思います。ただ、新入社員研修を預かった時にはやらざるを得なかったので、マインドに関して語って聞かせる程度のことはやりましたね。響く子、響かない子っていうのは明らかに差が出ていました。今の立場になって、どのように伝えれば響くのかは分かってきました。

参加者
パナソニック産機システムズ様のような取り組みは、僕ら(人事担当者)が本気になっていないと上手くいかないですよね。
山村氏
手前味噌になりますけど、採用の段階から「僕は本気だよ」と見せてますから、彼らもやらざるを得ないってなります。彼らに丸投げして、「さあ会社を変えてくれ」って言ってもそれは無理でしょう。コーディネートしてあげないと。急にはできないですし、何年越しですよ。うちの会社は20年分の先輩がいないという労務構成など、様々な条件が重なった、特殊例かもしれませんが、時間をかけて取り組んでいかれればなりませんが、絶対できると僕は思いますよ。

参加者
ウチの会社はグループ会社がそれぞれ採用をしていて、研修は一緒にやるんですけど、だからバラバラなんですよね。
山村氏
難しい部分なんですよね。だからこそ現場に配属したらスキル面はほとんど口出ししないようにしてます。その代わり新入社員の資質やマインドに文句があるなら人事に言ってくれという話はしています。育て方については現場を信じています。手間ひまかけて集めてきて、ここまで下ごしらえをして託すわけですから、現場もそれなりに考えてくれてます。そこはいい緊張感です。良い意味で喧嘩してます(笑)
インタビュワー
ありがとうございます。他にもお聞きになりたいこともあるかと思いますが、お時間が参りましたのでセミナーを終わらせていただきたいと思います。長い時間ありがとうございました。
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